どれくらいの人におこるの?
妊娠した人の約15%に流産は見られます。その内訳は早期流産(妊娠12週未満)13.3%で後期流産(妊娠12週以降)が1.7%です。特に妊娠初期に多く、稀なことではありません。
つまり、100人の女性が妊娠すると、そのうち15人は妊娠しても流産してしまうことになります。
どんな症状がでるの?
性器出血と腹痛です。出血や腹痛の症状は流産が進んだ時にでることが多く、出血などの症状が
なくても突然流産することはあります。
流産になったらどうなるの?
流産ときまったら、子宮を妊娠前の状態に戻す必要があります。
完全流産(胎芽をふくむ妊娠性の組織が含まれる胎嚢という袋が完全に子宮外に排出されること)
の場合は稀に手術をせずにそのまま経過観察することで生理(月経)が戻ってくることがありますが、
流産組織が子宮内の残ったまま放置すると出血が続き、又、感染が生じて、それがもとで不妊の原
因になることがあります。
その理由から、流産が確定したら出血や腹痛等の症状がなくても流産に対する治療が必要です。
流産の原因は?
胎児に原因がある場合
染色体異常や遺伝病
母体に原因がある場合
子宮の異常…… | 子宮筋腫 双角子宮 頚管無力症 子宮内感染 |
その他………… | 甲状腺 糖尿病 膠原病などの内科の病気や感染症があります。感染症では普通の風邪で流産することはほとんどありませんが、インフルエンザ等のウィルス感染は流産の原因になります。 |
早期流産(妊娠12週未満)のほとんどが受精卵の染色体異常が原因で流産は止められないものです。こうした例では母体に問題があるわけではありません。
後期流産(妊娠12週以降)は胎児側の原因もありますが、母体側の原因が増加します。
また、自然流産が2回連続することを反復流産といい、3回以上連続するものを習慣性流産といいます。
流産の確立が15%(15/100)とすると、反復流産は2~3%=(15/100)×(15/100)、
習慣性流産は0.3%=(15/100)×(15/100)×(15/100)と確率的には稀なことで、何らかの原因があることが多く検査が必要です。
流産の治療
※早期流産(妊娠12週未満)
流産手術
(1)子宮頚管の拡張
(2)麻酔
静脈麻酔(血管注射のよる全身麻酔)のため、
深い眠りで痛みは感じません。
(3)子宮内の胎嚢の除去(吸引法)
費用は保険の適応です。
※後期流産(妊娠12週以降~22週未満)
妊娠12週以降は胎児や絨毛(将来胎盤になる部分)・胎盤が大きいため、手術によって胎児や絨毛を子宮内よりとりだすことが困難のため、死産分娩となります。
死産分娩とは?
陣痛促進剤をつかって陣痛をおこし、分娩することになりますから、自然分娩と同じくらい入院や費用がかかります。
(申請すれば出産育児一時金は支給されます。)
原因は?
原因はさまざまです。受精卵が子宮に着床して胎嚢(赤ちゃんを包んでいる袋)が成長する過程は不安定で元々出血がおこりやすい時期です。
●胎児(赤ちゃん)側… | 受精卵の異常(染色体異常や遺伝子病など) |
●母体(子宮)側……… | 子宮の収縮 動きすぎ、感染症、絨毛膜下血腫、絨毛膜羊膜炎、子宮筋腫 |
切迫流産の治療
最も大切なことは安静です。特に出血が多い時、腹痛が強い時は子宮が収縮しています。そんな時にはトイレにいく以外は横になって休むぐらいの安静は必要です。(当然、家事、仕事はできません。お風呂やシャワーも控えた方がよいです。)
その他に薬物治療もありますが特効薬ではありません。
治療薬
(1)子宮収縮抑制剤
(2)止血剤
(3)ホルモン剤
(4)抗生物質(感染が考えられるとき)
安静が一番です。
原因は?
●過労や動きすぎによる子宮の収縮 |
|
●母体(お母さん)の病気…… | 妊娠高血圧症候群・心臓病・腎臓病・糖尿病 |
●子宮の病気…………………… | 子宮筋腫・双角子宮・子宮頚管無力症・頚管裂傷・前置胎盤・常位胎盤早期剥離 |
●胎児(赤ちゃんの病気)…… | 逆子(骨盤位)・双子(多胎妊娠)・羊水過多 |
●感染(絨毛膜羊膜炎) | |
●絨毛膜下血腫 |
切迫早産の検査
● | 子宮口(子宮の出口)の検査 子宮口がどれくらい開いているかを内疹や経膣超音波で調べる。 |
● | 胎児心拍陣痛測定 赤ちゃんの心音の状態と子宮収縮(お腹の張り)を調べる。 |
● | 早産マーカーの検査 |
● | 腟内の細菌検査 |
● | 血液検査 |
切迫早産の治療
切迫早産の治療の基本は安静と治療薬です。
軽症であれば自宅安静や通院治療も可能ですが、入院治療が必要なこともあります。おなかの張りが強く繰り返しおこる場合、大目の出血や破水を疑うような場合は診察が必要です。
治療… | 一刻も早く分娩して赤ちゃんの安全を確保して、子宮の出血をとめることです。 必要があれば帝王切開が必要なこともあります。 |
症状…… | 外陰部や腟の強いかゆみと白色おりもの(チーズ様~豆腐のカス)が特徴です。分晩時に赤ちゃんに感染し、鵞口瘡(口腔粘膜に白い菌塊が付着する)をおこすことがあり、母体の治療が必要です。 |
治療…… | 膣錠を使用します。 |
症状…… | 外陰部や膣のかゆみや黄色のおりもの(膿性や泡沫状)が特徴です。 流早産や破水の原因になるので治療が必要です。 |
治療…… | 膣錠(膣座薬)や内服薬を使用します。ピンポン感染を防ぐためにパートナーも同時に治療することを勧めます。 |
症状…… | 感染しても自覚症状がほとんどないこともあります。子宮外妊娠や流早産も原因になります。 |
治療…… | 感染すると自然に治ることはありません。抗生剤(内服薬)で治療します。必ず治りますが再感染しますので ピンポン感染を防ぐためにパートナーの検査や治療が必要です。 |
症状…… | 膣や外陰部に浅い潰瘍(おできがつぶれたような感じ)と強い痛みが特徴です。再発を繰り返すこともあります。 |
治療…… | 内服、注射、クリーム(局所に使用)があり、妊娠中にも治療が可能です。胎内のあかちゃんに感染することはありませんが、外陰部にヘルペスがあり、分晩時に赤ちゃんがそれに触れて感染し、重い肺炎や脳炎になることがあり、外陰にヘルペスがある時は感染を防ぐために帝王切開になります。 たとえ妊娠中にヘルペスが発症しても、分晩時に治っていれば帝王切開の必要はなく、自然分娩が可能です。 |
治療…… | 電気メスや、レーザー、冷凍凍結療法にてコンジローマを切除します。 |
症状…… | 「高血圧」「尿タンパク」が特徴でそのために 頭痛、倦怠感(だるい、疲れやすい)、むくみが見られます。 頭痛に加えて目がチカチカする症状がある時は要注意です。診察を受けた方がよいでしょう。 重症になると子癇、常位胎盤早期剥離、子宮内胎児発育不全、胎児機能不全を生じてお母さんや赤ちゃんの健康が損なわれます。 |
治療…… | 安静と食事療法です。 安静…動きすぎ、興奮すると血圧が上がります。血圧が非常に高い時は、降圧剤を併用します。 食事…低カロリー(体重増加の予防) 低塩(高血圧の予防) 高タンパク(タンパク尿もよって体からタンパク質が失われるため) カルシウムの補給 |
ルテイン嚢胞とは?
ルテイン嚢胞は妊娠初期に一時的に卵巣が腫脹するもので真の卵巣腫瘍ではありません。妊娠中期になると自然に小さくなりますから、妊娠中に問題に
なることは稀です。
妊娠初期には将来胎盤を形成する絨毛という組織から絨毛性ゴナドトロピン(HCG:human chorionic gonadotropin)というホルモンが分泌されます。
このHCGというホルモンは、「排卵の後、卵巣に形成された黄体を刺激してその機能を維持させる役割」を持っています。
黄体はエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌し、受精卵が子宮内膜に着床し、発育してゆくのに適した環境を作り出してゆく大事(妊娠の維持)な役割を担っています。
妊娠初期、とくに胎盤が形成される妊娠12~16週までは妊娠の維持黄体の機能が維持されなくてはなりません。そのために、HCGによる卵巣の過剰刺激のため、卵巣が腫大することがあり、これをルテイン嚢胞といいます。
胎盤ができ始めるとエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が胎盤より分泌されるため、黄体はその役目を終え、それと共にルテイン嚢胞も小さくなります。
卵巣嚢腫とは?
妊娠中に卵巣嚢腫が発生することは稀で多くの場合、妊娠前から持っていても症状がないため、妊娠してから見つかることが多いようです。風船のような薄い膜につつまれたもので中身によって漿液性嚢腫(さらさらした液体)、粘液性嚢腫(ドロドロした液体)、皮様嚢腫(脂肪や歯)などがあります。
卵巣嚢腫の治療
小さくて症状(痛み)のない時は、治療の必要はありません。症状(痛み)があれば、妊娠中のため基本は安静です。
痛みのある側を上にして休むのがよいでしょう。我慢時できないには妊娠中でも使用できる鎮痛薬(痛み止め)もあります。
卵巣は図のように卵管と共に子宮の横に位置しています。妊娠して子宮が大きくなると卵巣腫瘍の位置が変わったり、捻(ねじ)れたりすると痛みが増大して、時に手術が必要になることがありますが、手術は必要なことは非常に稀です。